作品1

シックハルトが、ナッサウ=ディーツ侯の摂政、ヘンリエッテ・アマーリエ・フォン・アンハルト=デッサウ(Henriette Amalie von Anhalt-Dessau, 1666-1726)に献呈したソナタ集です。彼女に向けて、丁寧な献辞が記されています。彼女とシックハルトの出身地は現在のドイツ、ナッサウ=ディーツ侯は現在のオランダ北部の州の総督でしたが、ドイツ語やオランダ語ではなく、フランス語で書かれています。当時は、フランス語が支配階級の共通言語だったためです。シックハルトの名前も、ヨハン・クリスティアン(Johann Christian)をフランス風にジャン・クリスチャン(Jean Christiaen)と綴っています。
献辞には「6のソナタ」とありますが、小規模な7番を含め、7のソナタが収録されています。


献辞

アルトリコーダーと通奏低音のためのソナタ集

アンハルト候の公女としてお生まれになり、ナッサウ候の未亡人侯妃にして摂政、ザクセン、エンゲルン及びウェストファーレン公爵領、アスカニア、カッツェンエルンボーゲン、ヴィアンデン、ディースト及びシュピーゲルベルク伯爵領、レルブスト、ベルンベルク、バイルシュタイン、リースフェルト男爵領、アメランドの荘園及び島など多数の領主であらせられる殿下に、ジャン・クリスチャン・シックハルトから捧げる。
初作
アムステルダムにて
エスティンヌ・ロジェ出版社


殿下、
私は長年、余暇の時間にお楽しみいただくために、新しい音楽作品を披露する栄誉を切望しておりました。殿下がこのような作品を特に高く評価されていることを承知しております。しかし、私がこれまで計画を実行することを控えていたのは、殿下が音の調和の中で最も美しく、最も正しいものを完璧に識別する、その驚くべき正確さを私が存じ上げていたからです。非常に繊細な耳をお持ちの殿下の御評価に、私の弱々しい作品を委ねることを当然ながら恐れていました。なぜなら、最も幸運な天才の作品だけが、殿下の御注目に値するからです。
このように考えて、私はまだ躊躇しております。しかし、私が一生涯にわたり持ち続けるであろう、殿下が示してくださった特別な恩恵に対する深い感謝を表明することを、私は熱望しています。臆病さに打ち克ち、殿下に敬意を表し、殿下の名高い庇護を受けるため、アルトリコーダーのための6のソナタをお贈りすることができた理由は、それ以外にありません。この6のソナタは私の作風の最初の試みです。意図に見合う才能があったなら、この小品は、殿下に無邪気な喜びをもたらすと同時に、私の熱意と、私が誰よりも持っている深い崇敬の念を示すことにもなるでしょう。
殿下へ
殿下の最も謙虚で、最も従順で、最も忠実な僕である
ジャン・クリスチャン・シックハルトより


1番 ハ長調

短い8の楽章で構成されています。緩徐楽章は第5楽章のみ。


2番 ニ短調


3番 ホ短調


4番 ロ短調


5番 へ長調


6番 ト長調


7番 ト短調